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2013年4月

2013年4月28日 (日)

映画 天使の分け前 ☆☆☆

■ THE ANGELS' SHARE 2012年 

  イギリス/フランス/ベルギー/イタリア 101分 (ミリオン座)  

■ 監督 ケン・ローチ

■ 脚本 ポール・ラヴァーティ

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映画のあと味は、極上のスコッチとはほど遠いものだった。

前半部のひりひりするようなシビアな設定。

後半部の放念しきったような楽観的な着地。

この大きな落差が生む違和感。

          *

この映画で、はっと息をのむ最も印象的なシーンは、

主人公ロビーに半死半生の目に遭わされた青年が

事件当時の状況を、嗚咽をこらえながら説明するく

だりであり、そして、それを聞きながら痛恨の念を新

たにするロビーの表情である。

しかし、それが、後半につながっていかない。

痛恨が哀憐に、加害が報償に転換しないのだ。

映画で描かれるのは、ロビーのテイスティングの才能。

そして、小悪党らしい小細工。

         * 

ロビーが「天使の分け前」を与えた相手はハリーだったが、

真に「天使の分け前」を贈る相手は、そうではない。

その将来を奪われた青年を、ロビーは完全に忘れている。

思い出すことさえも無いようだ。

 

そのように描いた映画に芳醇な香りは漂わなかった。

 

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2013年4月27日 (土)

映画 最終目的地 ☆☆☆☆

■ THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION 

  2009年 アメリカ 117分  (瀨戸蔵 つばきホール)

■ 監督 ジェームズ・アイヴォリー

■ 原作 ピーター・キャメロン

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自殺した作家ユルスの伝記の執筆をめぐって、

照らしだされる作家の兄、妻、愛人、兄のパートナー。

そして、執筆をこころざす青年とその恋人。

その6人の生のありよう。

               *

この映画のよさは、俳優たちの存在感が素晴らしいことだ。

アンソニー・ホプキンスの表情やしぐさの何と豊かなこと。

長く生きてきた人の妙味といったものを感じさせる。

真田広之は日本映画では見せなかった自然の演技が抜群。

複雑な心境で日々を暮らす未亡人役のローラ・リニーにもこ

ころひかれる。

               *

81歳。ジェームズ・アイヴォリー監督。その意欲と力量に敬意!

 

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2013年4月21日 (日)

DVD キラー・インサイド・ミー ☆☆☆☆★

■ THE KILLER INSIDE ME 2010年 アメリカ/スウェーデン/

                         イギリス/カナダ 109分

■ 監督 マイケル・ウィンターボトム

■ 原作 ジム・トンプソン

■ 主演 ケイシー・アフレック 

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凄まじいストーリー。リアルな演出。ともに抜群。

それにもまして、保安官助手役のケイシー・アフレックが素晴らしい。

             *

ねばりつくようでいてクールな響きのある、独特の声いろ。

すこしゆがめながら話す口元。

何を腹のなかに秘めているのか、頭でなにがうごめいているのか。

他者に微妙な屈折感をいだかせる若い保安官助手ルー。

あの主人公を演じられるのは彼しかいない。

               *

「ジェシー・ジェームズの暗殺」(2007)の青年ロバート役

ゴーン・ベイビー・ゴーン」(2007)の私立探偵パトリック役

の彼も同様だが、

「キラー・インサイド・ミー」でも、実在感のある人間を演じている。

これからも、どんな人間をみせてくれるのか。期待小としない。

 

 

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2013年4月20日 (土)

DVD おとなのけんか ☆☆☆★

■ CARNAGE 2010年 フランス/ドイツ/ポーランド 79分

■ 監督 ロマン・ポランスキー

■ 原作 ヤスミナ・レザ

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こどものけんかに、へたなおとながへたに介入すると、

招く事態はかくの如しの、最悪でうんざりする一例。

これは、現実に

ありえないようで、ありうる展開なのか。

ありうるようで、ありえない曲折なのか。

           *

この映画ほどではないが、前者のような出来事を目に

したおぼえが、私には複数回ある。

だから、「おとなのけんか」は説得力のある映画だとは

思う。

そう思うが、しかし、むねの悪くなるような描写はたと

えポランスキー監督といえども、どうしたものかと

をひねってしまった。

あれは露悪趣味過ぎマス。

 

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2013年4月18日 (木)

映画 悪人に平穏なし ☆☆☆☆

■ NO HABRA PAZ PARA LOS MALVADOS 

        2011年 スペイン 114分  (名古屋シネマテーク)   

■ 監督 エンリケ・ウルビス

■ 脚本 エンリケ・ウルビス ミシェル・ガスタンビデ

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悪徳警官を題材にした映画や、テレビドラマはゴマンとある。

しかし、映画「悪人に平穏なし」は、主人公がおのれの悪事隠蔽に

奔走する中で、思わぬ謀略に出くわしてしまうという作劇の面白さ

が新しい。

加えて、日本のドラマにありがちな子供っぽいドタバタタッチはいさ

さかも見せず、重厚な大人の演技で全編がつらぬかれている。

薄っぺらなところが全くない。

加速するサスペンスと、爆発するバイオレンスが、じつに心地よい。

               *

たしかに刑事サントスは警官失格かも知れないが、

彼にも言い分はあり、それも二言三言ではすまないはずだ。

まちがいなくイスラム派テログループは卑劣かも知れないが、

彼らなりの理屈は、しこたまあるに違いない。

だが、そうであっても、非情なひと言で片付けられてしまうのだ。

悪人に平穏なし、と。

 

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2013年4月17日 (水)

DVD 三重スパイ ☆☆☆☆★

■ TRIPLE AGENT 2003年 フランス 115分

■ 監督・脚本 エリック・ロメール

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この映画で、久々にひとつのことばを思いおこした。

「韜晦」(姿を隠すこと。才能・本心などを包み隠すこと。)だ。

                *

スペイン内乱の勃発。

起こるかも知れぬ予感のただよう第二次大戦を前にして

ロシアからの亡命者フョードルは、パリでいったい何を画策しているのか。

出張と称して、ドイツやベルギーを訪れる目論見は何か。

ナチスドイツとの連帯?対フランス共産党の諜報?母国ソ連共産党への接近?

                *

彼のミステリアスな言動とはうらはらに、

ロメールの映像は、フランス印象派の絵画のようにみずみずしく、

登場する女性たちも前世紀の美しさに輝いている。

それゆえに

フョードルの韜晦はますます謎めくのだ。

そこに、監督ロメールの映画の凄さがあるように思えてならない。

 

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2013年4月16日 (火)

映画 コズモポリス ☆☆☆☆☆

■ COSMOPOLIS 2012年 フランス/カナダ 110分

                                               (センチュリーシネマ)

■ 監督・脚本 デヴィッド・クローネンバーグ

■ 原作 ドン・デリーロ

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今まさに、世界の経済の実体は不気味な生き物のようだ。

コンピュータのモニターには、為替の変動が刻々と映し出される。

その生き物は、むくむくと増殖し、変形し、消滅する。

あれよあれよで儲け、あれよあれとで損をする。

世界中の、どの町も、異形の生き物が蠢く国際都市。

底知れない虚無感と退廃感を生み、

じわじわと首すじをはい上がるような焦燥感に満ちる国際都市。

                *

その来るべき予感を見事に描く

クローネンバーグの魔術的な映像がたまらない!

 

 

 

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2013年4月15日 (月)

映画 舟を編む ☆☆☆★

■ 2013年 133分 (MOVIX三好)

■ 監督 石井裕也

■ 原作 三浦しをん 

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2時間余の長さの映画にしては、あまりにも調和的な話運び、あまり

にも平凡な終わり方は、正直つらかった。

                *

国語辞書の編纂作業にたずさわる人たちに興味はあったし、その完

成までの過程にも少なからずの関心を抱いて、この映画を観た。

しかし、膨大な作業ゆえの懊悩や、必ずやあったはずの幾多の挫折

の淵の深さは、どうしても映画からは感じられなかった。描き切れて

いないのだ。だから「大渡海」という辞書の名も、やや空疎に響いた。

                *

それでも、この映画でみるべきものはある。

ベテラン俳優たちのキャスティングのよさである。

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特に、印象的なのは、タケを演じた渡辺美佐子。表情の豊かさ。

たしかな存在感。これぞベテラン。

 

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2013年4月12日 (金)

DVD  カミュなんて知らない ☆☆☆☆ 

■ WHO'S CAMUS ANYWAY? 2005年 115分

■ 監督・脚本 柳町光男

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およそ12分間続く、惑乱する夢魔のような、最後部のシークエンス。

前半のつかみどころない視点の散漫さは

吹き消され、

監督柳町の映画的冒険の詰まった世界が

息苦しいほどの血迷った美しさをともなって

繰り広げられる。

この衝撃的な撮り方は映画そのもので、ほとんど天才的だ。

 

 

 

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2013年4月11日 (木)

映画 ある海辺の詩人 ☆☆☆☆★ 

■ IO SONO LI 2011年 イタリア・フランス 98分 (名演小劇場)

■ 監督 アンドレア・セグレ

■ 撮影 ルカ・ビガッツィ

■ 音楽 フランソワ・クチュリエ

■ 主演  チャオ・タオ(趙濤)  ラデ・シェルベッジア

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イタリアで働く中国人労働者シュン・リー。一児の母。

チャオ・タオはその役を、自然に完璧に演じて、圧倒的だ。

ジャ・ジャンクー監督の「世界」「長江哀歌」「四川のうた」での

タオの演技も素晴らしかったが、この映画でも見事と言うほか

はない。

撮影も、音楽も、同室の女ともだちの友情も、ともに美しい。

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2013年4月 8日 (月)

DVD 戦火の馬 ☆☆☆☆

■ WAR HORSE 2012 アメリカ 146分

■ 監督 スティーヴン・スピルバーグ

■ 撮影 ヤヌス・カミンスキー

■ 音楽 ジョン・ウィリアムズ

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豊富な製作資本と膨大な人材を投入し、巧みな映画手腕を誇る

スピルバーグ・チームによる、馬がまるで俳優のように演技する

戦争映画、とでも言えばよいのか。

スティーヴン・スピルバーグはつくづく映画職人だと思わせられ

た。

 

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2013年4月 7日 (日)

DVD 青春の殺人者 ☆☆☆☆☆

■ ATG 1976年 132分

  (DVD 2001年版 本編120分+特典68分)

■ 監督 長谷川和彦

■ 原作 中上健次

■ 脚本 田村 孟

■ 撮影 鈴木達夫 

■ 出演 水谷豊  原田美枝子  市原悦子  内田良平 

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リアルタイムでみて以来、DVDで再見した。

37年前なので細部の記憶は定かではないだろうと思いながらだ

ったが、母親を出刃包丁で殺すシーンはほとんど記憶通りだった

ので、我ながらおどろいた。

それほど強烈な印象を残すシーンだったのだ。

それは、若い作り手たちが、迫真の母殺しシーンを描くことこそ

本作品のほとんど総てだ思い定め満を持して撮ったためでは

なかったか。

映画で描かれた母殺しのシーンとして、今でもこれをこえる作

品はないだろうとさえ思う。

監督、原作、脚本、撮影、俳優、畏るべし。

そして、中上小説の映画では、この作品が白眉ではないかと

思う。

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DVDには、監督長谷川が作品、スタッフ、キャストなどについて語

るおまけが特典として付いている。

これが私にはすこぶる面白く、長谷川が語るところの浦山桐郎、相

米慎二、今村昌平、田村孟、鈴木達夫などのエピソードは興味津々

として尽きるところを知らない。          

 

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2013年4月 5日 (金)

DVD 蛇の人 ☆☆☆☆

■ 2010 ドラマW 放映 102分

■ 監督 森淳一

■ 脚本 三好晶子

■ 出演 永作博美 西島秀俊

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脚本のコンセプト-関わった人たちが皆なぜか不幸になっている-

を着想した時点で、たぶんこのドラマの成功は半ば約束されたと言

てよいだろう。

                   *  

他者を知らず知らずのうちに不幸にする今西を演じるのは西島秀俊。

得体の知れない、それでいて人を自然と信用させる男を絶妙の好演。

失踪した今西の行方を探す部下の独身OLの陽子役は永作博美。

この俳優二人が漂わせる雰囲気が、冷ややかな粘着性をドラマに

与え、水準以上の作品にしている。

後半部にやや瑕瑾は感じるものの、テレビ放映を前提とした映画とし

て出色の出来で、西島秀俊の代表作にもなるに違いない。

 

 

 

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2013年4月 4日 (木)

映画 メッセンジャー ☆☆☆☆★

■ THE MESSENGER 2009年 アメリカ 112分 (名古屋シネマテーク)

■ 監督 オーレン・ムーヴァーマン

■ 脚本 アレサンドロ・キャモン  オーレン・ムーヴァーマン 

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イラク戦争の知られざる一面を描いたアメリカ映画。 

ウィル軍曹やトニー大尉が抱える戦場での深いダメージ。

そして、二人から戦死の報を届けられる家族の狼狽、大きなダメージ。

その悲報への怒り、慟哭、自失ぶりが、大きく揺れる手持ちカメラの撮

影によっていっそう増幅される。

 「ゼロ・ダーク・サーティ」にまさるとも劣らない衝撃を与える映画だ。

 

   

    

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